公開日:2017年02月01日 更新日:2024年01月16日
塑性域締めつけと弾性域締めつけとは?ねじの締めつけ管理方法【第7話】
やっとかめ!ネジゴンだよ。
ねじ(ボルト)の主な役割は、締めつけにより発生する軸力で物を締結することだけど、実際の作業では軸力を直接監視することは困難だよね。そのためトルクレンチで締めつけトルクを管理して、軸力を担保している方が多いんじゃないかな。でも、ねじ(ボルト)の締めつけ管理方法はそれ以外にもあるんだよ。そして、その中にはトルクレンチによる管理より軸力のばらつきが小さくなるものもあるんだ。今日はそれらを知ってもらうために、ねじの締めつけ管理方法について解説するよ。
「弾性域締めつけ」と「塑性域締めつけ」
本題の締めつけ管理方法の解説の前に、まずは「弾性域締めつけ」と「塑性域締めつけ」について話しておくね。
ねじを締めつけて、軸力(応力)をかけていくと、降伏点までは軸力に比例してねじが伸び、軸力を取り除くと、ねじの伸びは元に戻るんだ。これを弾性域といって、この範囲内での締めつけが「弾性域締めつけ」だよ。
降伏点を超え、さらにねじを締めつけて軸力をかけると、比例関係がなくなり、軸力に対して伸びが急激に増えていくんだ。この状態になると、ねじに永久伸びが生じ、軸力を取り除いても元に戻らなくなっちゃうんだ。この範囲を塑性域といって、この範囲内での締めつけが「塑性域締めつけ」だよ。
「弾性域締めつけ」は、ねじの軸力のばらつきが大きいけれど、ねじのくり返しの使用が可能で、トルクレンチを用いたトルク法による締めつけ管理ができ、締めつけ作業が簡単という特長があるよ。
「塑性域締めつけ」は、ねじに永久伸びが生じるため、くり返し使用ができず、締めつけ作業にも時間がかかる、などの欠点があるけれど、弾性域締めつけよりも安定した軸力管理を行うことができるから、エンジンの組み立てなどに用いられているんだ。
「弾性域締めつけ」と「塑性域締めつけ」を利用した、締めつけ管理方法
では、いよいよ本題の締めつけ管理方法の解説を始めるね。
主なボルトの締めつけ管理方法としては、
①トルク法
②トルクこう配法
③回転角法
の3種類があるよ。
締めつけ領域は、先ほど説明した「弾性域締めつけ」なのか「塑性域締めつけ」なのかを示しているよ。
締めつけ係数とは、同じ条件でねじを締めつけた際の軸力のばらつきの程度を表していて、数値が大きいほどばらつくということを意味しているよ。こうして下表を見ると、前述したように弾性域締めつけは、ばらつきが大きいことがわかるよね。
締めつけ管理法 | 締めつけの管理項目 | 締めつけの領域 | 締めつけ係数* |
---|---|---|---|
トルク法 | 締めつけトルク | 弾性域 | 1.4~3 |
回転角法 | 締めつけ回転角度 | 弾性域 | 1.5~3 |
塑性域 | 1.2 | ||
トルクこう配法 | 締めつけ回転角に対する締めつけトルクのこう配 | 弾性域限度 | 1.2 |
トルク法
トルク法とは、締めつけトルクと締めつけ軸力との弾性域における線形関係を利用した締めつけ管理方法だよ。締めつけ作業時に締めつけトルクだけを管理する方法だから、トルクレンチでできる比較的簡単な締めつけ管理方法で、一般的に広く普及しているんだ。
でも、締めつけトルクは、その全てが軸力として作用するわけじゃなく、ねじ面や座面の摩擦によって消費されるんだ。そのため、同じトルクで締めつけても表面粗さや潤滑状態などによって軸力が大きくばらつくため、摩擦特性の管理に注意が必要だよ。
そのため、一般的にトルク法によるねじの締めつけは、発生する軸力が降伏点の60%~70%の弾性領域内が望ましいと言われているんだ。
回転角法
回転角法は、スナグ点からのねじ頭部やナットの締めつけ回転角度を、角度割出し目盛板(分度器)や電気的な検出器など管理して、締めつけ軸力をコントロールする方法で、弾性域締めつけ、塑性域締めつけの両方に用いることができるよ。
ちなみにスナグ点とは、ねじと座面を密着させるために必要な締めつけトルクを作用させた点のことだよ。
しかし、弾性域締めつけでは、回転角度による軸力の変化が大きくばらつきやすいため、作業が簡単なトルク法の方がよく使用されているんだ。
一方、塑性域締めつけでは、回転角の誤差による軸力の変化が小さくなるから、ボルトやナットの六角形状を利用した目視による角度管理が可能な場合もあるよ。
トルクこう配法
トルクこう配法とは、ねじの締めつけ軸力が降伏点を超えると、軸力に対して急激に伸びが増加する性質を利用した締めつけ法だよ。締めつけトルクと回転角を電気的なセンサなどで検出して、弾性域と塑性域の変化点をコンピュータで算出し、弾性域限度で締めつけを行うんだ。
必要な装置が他の方法より大がかりだけど、ばらつきの要因は材料の降伏点のみのため、トルク法や回転角法よりも軸力のばらつきが小さい方法なんだ。そのため自動車のエンジンやシリンダヘッドのボルトなど、締めつけの信頼性の高さを求められる場合に用いられているよ。
これらの締めつけ管理方法以外にも、ねじの伸びを直接測定し管理する測伸法や、ねじを高温に加熱して伸びを与えて、取りつける際の温度を管理する加熱法などもあるけれど、それはまたの機会に。
それじゃあ本日は、これにてご無礼するよ。