更新日:2024年01月18日
突然起こるねじの“遅れ破壊”【第9話】
こんにちは!ネジゴンだよ。
しっかり締めつけていたねじが、ある日突然折れてしまった、という経験はないかな?
振動などの動的荷重を繰り返し受けているねじが折れる「疲れ(疲労)破壊」は、理屈としてもよく分かるけど、安定的な静的荷重を受けているねじが、強度も十分なはずなのに折れてしまい、「あれ?どうして?」と愕然……。
これは「遅れ破壊」と呼ばれる現象なんだ。今日はその原理や解決策について解説するよ。
遅れ破壊とは

「遅れ破壊」とは、一定の引張荷重を受けているねじが、ある時間経過してから、ねじの外見には変形が見られないのに突然破断する現象のことを言うんだよ。
ねじの強度が高いほど発生しやすい現象で、目視の検査ではなかなか見つけることができないから、やっかいだよね。
破壊の原因は水素?
「遅れ破壊」が起こるメカニズムは、実はまだ完全には解明されていないんだよ。使用環境や材質、強度など、いろいろな要因が組み合わさって、ねじが脆化していくんだ。
その中でも、遅れ破壊の最も大きな原因は「水素脆性」だと言われているよ。「水素脆化」とも言われたりするよ。ねじの加工段階や使用環境などで、ねじの内部に水素が浸入して、時間の経過とともに応力が集中する箇所に集まって空洞をつくり、そこから破壊が起こるんじゃないかといわれているよ。
一般的には、ねじにかかる応力が1,000MPaを超えると水素脆性の影響を受けやすくなると言われているんだ。遅れ破壊が「ねじの強度が高いほど発生しやすい」と前述した理由はそのためだよ。
ねじの加工工程で水素が浸入している可能性があるから、1本のねじが遅れ破壊を起こすと、一緒に製造されたねじもすべて点検、あるいは交換することになってしまうんだ。折れたねじの交換だけでは終わらないって考えると、とても大きなトラブルになってしまうんだよ。
水素浸入はねじの表面処理が影響
ねじに水素が浸入する原因として、メッキ工程が考えられるよ。酸洗いで水素が発生したり、メッキする際に、浴中で水が電気分解して水素が発生して、水素が浸入するんだ。 表面処理以外の原因としては、腐食しやすい環境で使われているねじに起こりやすいことがわかっているよ。
遅れ破壊を起きにくくするには

メッキなどの表面処理による水素脆性を起きにくくするためには、ベーキング処理が有効なんだよ。加熱処理することで、ねじに吸収された水素を外に放出するんだ。それに、表面処理を短時間で行うことも大切だよ。
また、メッキ工程で、水素が発生してしまう酸洗いのような工程を他のやり方で代替して、水素を発生させない製造方法もあるんだ。
NBKにはその方法で高強度ボルトへのメッキを実現した、耐水素脆性にすぐれた六角穴付きボルト SNS-ELがあるので、検討してみてね。